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人間椅子×Mary’s Blood対談 ~後編~


6月5日に30周年記念アルバム『新青年』をリリースした人間椅子。そして、6月12日に移籍第2弾、通算5枚目となるフルアルバム『CONFESSiONS』を発表のMary’s Blood。奇しくも同時期に新譜を世に放つこととなった両バンドのベーシスト対談が実現した。人間椅子の鈴木研一とMary’s BloodのRIOはともに青森県弘前市出身。対談前編では、同郷ならではの濃いローカル・トークが次々と飛び出したが、お互いの新譜の話を皮切りにベーシスト談義に花が咲いた後編もますますディープに……。

TEXT BY 志村つくね
 

■RIOが聴いた人間椅子『新青年』

 

―― お互いの新譜の話もお聞きしたいです。RIOさんは人間椅子の『新青年』を聴かれましたか?

RIO 何回も聴いて、いろいろメモってきました(と、手書きメモびっしりの手帳を取り出す)。和嶋さんが1冊の短編集みたいな感じとコメントしてらっしゃるように、その通りだなと思ったんです。一個一個の物語が1冊の“本”を形作ってる感じがしたんです。たくさんメモったんですけど、曲単位でいうと……。

鈴木 わ~。マメだねぇ。俺、Mary’s Bloodの紙資料に何もメモしてないけど、「エイム」には○をつけたよ。

RIO (笑)。『新青年』の中で私が一番好きだったのが、「地獄の申し子」です。

鈴木 あっ、でも、たしかに、RIOさんはモーターヘッドが好きだから聴きやすいかもしれない。

RIO この曲の前に「地獄小僧」という曲があるじゃないですか。そこからの「地獄の申し子」っていうストーリー性もすごくいいなと思って。こういう曲の並べ方については、メンバー同士で話をされるんですか?

鈴木 そこのところ、Mary’s Bloodの話も聞きたいけど、今回は13曲録音したんです。そこで曲のタイトルを書いた紙を13枚作るわけですよ。3人で「う~ん……」って悩みながら何回も並べ替えて、「これでいいんじゃない?」って全員一致した時に、曲順ができあがるんです、人間椅子の場合は。

RIO そうなんですね。

鈴木 ストーリー性もあるけど、どちらかと言えば、アルバムとして、聴いてる人が飽きないようにってことを考えてます。歌う順番も和嶋、鈴木、和嶋、鈴木って、なるべく交互になるように。ダウン・チューニングについても、そういうのがあまりにも入り組んだりして聴きづらくならないように。これでもすごい考えてるんですよ(笑)。

RIO ゆったりしたペースで行くのかなと思いきや、6曲目の「いろはにほへと」でアップテンポになるのが、めっちゃフックだなと思いました。

鈴木 たしかに。なかなか鋭いですねぇ。1~5曲目までずっとヘヴィに来て、レコードのA面をB面にひっくり返したぐらいの変化をここで付けてみたんです。

RIO 「あなたの知らない世界」っていう曲のBメロのベースの使い方が絶妙だなと思ったんです。

鈴木 あれはオクターブです。あそこはすごく悩んだんですよ。和嶋くんの曲は和嶋くんがベースラインも考えて持ってくるんだけど、そのBメロのところだけ、どうもしっくりこなくて。それで二人で「ああでもない、こうでもない」って相当悩んで、ああなったんですよ。そこに気付くとは鋭いですよ。

RIO 私、ベーシスト至上主義なんで(笑)。私のツボがかなりありましたね。

■鈴木が聴いたMary’s Blood『CONFESSiONS』

鈴木 俺もいろいろRIOさんに聞きたいんですけどね。『CONFESSiONS』の曲順ってどうやって決めたんですか?

RIO 今回の曲順はメンバー間でも結構意見が割れたんです。「Labyrinth of the Abyss」は1曲目に入れようって、早い段階から決めちゃって。2曲目もプロデューサーの岡野ハジメさんがこれで行こうって、とりあえず、ここまでは決まったんです。

鈴木 そういうの、ありますよね。人間椅子も「無情のスキャット」が最後の曲っていうのは絶対だって、最初から決まってたんです。

RIO 基本的にウチのアルバムでは、リード・トラックになるものって2曲目になることが多かったんですよ。だから、今回も悩んだんですよね。最後に「贖罪の鐘~Requiem for the victims~」で終わるっていうのも、ベッタベタじゃないですか。

鈴木 でも、いいじゃないですか。ベッタベタで作ったんだなぁと思って、良いと思ったんだけど。

RIO これが最後が良いって言ったのは私なんですけど、8曲目の「HIGH-5」っていうちょっと明るいパンク調の曲で終わらせる案もあったんです。今回はテーマが『CONFESSiONS』で、“本音”とか“告白”っていう意味なんですけど、世界観重視にしたくて、この曲を最後に持ってきましたね。アルバムでいつも悩むのは、真ん中あたりの曲順です。

鈴木 自分たちもそうですよ。頭とケツはすぐ決まるんだけど、真ん中ですよね。昔はレコードでA面最後とB面アタマっていう、わかりやすい区切りがあったんだけど、今はそれがないんでね。この『新青年』も70分あるから、真ん中でダラけるのをどうやってクリアするかっていうのが曲順のテーマでしたね。別にRIOさんと話をしてるから言うわけじゃないんだけど、俺はこの「Hello」っていう曲がすごい好き。

RIO やった~! それはマジで嬉しいです!

鈴木 なんかね、心が洗われるっていうのかな。明るい曲調なんだけど、ジーンとくるんだよね。

RIO ありがとうございます。

―― これはRIOさんが作曲されたんですね。

RIO 私です。今まで私の曲は1曲ぐらいしかアルバムに入らなかったんですけど、今回は「エイム」「Hello」「HIGH-5」の3曲が入ってます。

鈴木 これ、歌詞にもジーンときちゃうんだよね。

RIO これは私も思い入れがあって、歌詞も全部指定しました。

鈴木 あっ、そうなんですか。「歌詞はこうやって」って頼んだ感じなんだ。

RIO 人間って、大人になっていくにつれて、人に甘えられなかったり、喋りたいことも喋れなかったりしますよね。現代社会を客観的に見た時に、多分、誰しもが思うことなんですけど、現実ですごい嫌なことがあって、寝てる時に見てる夢がすごい良いものだったら、きっとこの夢から覚めたくないんだろうなって。最初の設定は男性だったんですけど、後から女性に変更したんです。OLさんでも学生でもいいんですけど、職場ですごい嫌なことがあって、もういやだーって、その日見た夢がたまたま楽しい夢だったり、その夢の住人が自分の味方だらけの状態だったら、最高だなと思って。

鈴木 それで歌詞が全部ひらがななんですか。夢の中だから。

RIO そうなんです。大人ってやっぱり、大きい子どもだなっていうのがどこかにあって、ちょっと精神年齢を下げてみようと思ったんです。タイトルも、自分が小さい頃に覚えた最初の英単語であろう「Hello」にしました。

■RIOの言葉選びに興味津々の鈴木

鈴木 「Hello」と「エイム」はRIOさんが初の作詞ということで。「エイム」ってなんのことだか、結局自分はわからなかったんだけど(笑)。ゲームの言葉なんですか?

RIO そうなんです。「当てたい時に当てたい箇所へ当てる能力」ですね。例えば『ポケモンGO』とかでの距離感。プレイヤー力っていうか。

鈴木 そうなんだ。きっとゲームのことだろうなとは思ったけど、やっぱりゲームだった。RIOさんがすげー『ファイナル・ファンタジー』を好きなのを知ってたから。

RIO 今回はスマホゲームの闇を題材にしてみました。

鈴木 歌詞中の「AR」って言葉はなんなの?

RIO バトルロワイヤルみたいなゲームがあって、最初は武器探しから始まるんですよ。いろんな武器があるなかで、私のお気に入りはM416っていうアサルト・ライフル。「AR」はアサルト・ライフルの略です。

鈴木 あ~、やっとわかった! 武器だったんだ。謎が解けてよかった。「ゲーム好きの人にだけわかればいい」っていう、この感じが良いと思ったんですよ(笑)。

RIO (笑)

鈴木 あと、世代が違うからかもしれないけど、まったくわからないのが「HIGH-5」っていう言葉。

RIO これは仮タイトルが「Ahead」だったんですけど、ヴォーカルのEYEちゃんが歌詞を付けてくれた時に、「ハイタッチ」みたいな曲にしようということになって。その時、プロデューサーの岡野さんが海外ではハイタッチのことをハイファイブって言うって教えてくれて、「それ、めっちゃ良いじゃん!」って。

鈴木 へ~! そういうことだったんだ。この曲の「ハイファイブ Yeah!!」っていうところが、すごいカッコいいんだよね! ヴォーカルのEYEさんって、曲によってすごく歌い分けるじゃないですか。すごい絶叫系の曲もあれば、可愛く歌う時もある。「HIGH-5」って、明るい曲調なのに、結構力を入れて歌ってて、それがカッコいいと思ったんだよね。EYEさんの歌にはいろんなパターンがあると思うけど、このアルバムの中では、この曲の歌い方がお気に入りなんですよね。「アルカディア」のMVのショート・ヴァージョンも観ましたよ。

RIO ありがとうございます!

鈴木 どこで撮ったんですか?

RIO あれは九十九里です。

鈴木 あ~。近場で収めようっていう(笑)。

RIO (笑)

鈴木 自分たちだって大洗の砂浜でMVを撮ったからね。ちなみに、人間椅子の「りんごの泪」のMVも九十九里ですよ。

RIO お~! 今、撮影できる海も少ないらしいですね。この時は、めちゃくちゃ寒かったです。

鈴木 いつ撮ったんですか?

RIO 2月か3月。

鈴木 そりゃ寒いわ。

RIO 「いけるっしょ!」みたいな感じだったけど、全然いけなかったですね。

鈴木 その時期には、すでにこのリード曲ができてたんですか?

RIO そうですね。

鈴木 レコーディングはいつだったんですか?

RIO 去年の11月ぐらいから始めて、1月頭で終わりました。

鈴木 え~! そんなに前からやってるんだ。

RIO 12月は本当に忙しかったです。

鈴木 やっぱり、そういうふうに先行してレコーディングしたほうがいいんだね!

RIO いやいや、違うんですよ。私、ちゃんと正月を迎えたかったんで。年をまたがずに、9曲絶対に録り終えようと思ったんです。そうじゃないと、年を越した感がないので。

鈴木 発売日がほぼ一緒なのに、すごいね。11月、人間椅子はまだ1曲もできてなくて、曲作りの段階でした(笑)。全然レコーディングのテンポが違う……。その代わり、どこで挽回するかといえば、リズム録りを全部一発でやるんです。

RIO それは本当にすごいですよ!

■足し算できる方はいっぱいいるけど、鈴木さんみたいに引き算できる人ってなかなかいない(RIO)

RIO 私、ギターがコードになった時に鈴木さんが「ドゥルルドゥルル♪」ってハンマリングするのがすごい好きで。

鈴木 は~。それぐらいしかやることがないってことなんだけど。

RIO いやいや(笑)。

鈴木 1stの頃はすごい一生懸命動いてたりしたんだけど、年をとると、だんだん減っていくんですよ。「ベースとは一体なんだろうか?」ってことを考え出すと、そういう無駄な動きがだんだんシンプルになって、「グーン♪」とか「ポーン♪」とか短い音でキメたくなっちゃう。で、ライヴになると、今までオブリガードを弾いてた部分が「ワァ~!」って声で叫んで終わり、とかね。「グィーン♪」一つだけとか、なんかシンプルになってくるんです。

RIO でも、シンプルなのが逆にカッコいいみたいなところもありますよね。

鈴木 俺もそう思ってやってますよ。

RIO 足し算できる人はいっぱいいるけど、鈴木さんみたいに引き算できる人ってなかなかいない。

鈴木 おっ! すごい名言が飛び出しました(笑)。

RIO 足し算できるってことは、知識があるし、技術がある。それがあってこその、鈴木さんのような引き算だと思うんですよね。始めはいっぱい音数を入れたっておっしゃっいましたけど、だんだんシンプルになっていくのって、そういうことなんだなと思って。

鈴木 なんかね、弾けないっていうのもあるんだけど、あまりいっぱい動くオブリよりも「グイーン!」ってやったほうがカッコよく聴こえるからっていうのもある。先人たちのライヴ盤で、一生懸命速弾きしてるよりも、「ググーン!」ってやってるベースのほうが自分にはよく聴こえたりするんだよね。

RIO 私もそういうのがすごく好きなんです。

鈴木 RIOさんは多分、そっち側だろうなと思います。ライヴのベースソロを観ていても、「やっぱり、そっちだったか!」っていう。ああいうのが良いんだよね。

RIO 鈴木さんのように8ビートがカッコいい人って、なかなかいなくて。私の思うカッコよさって、人から見れば簡単そうに見える8ビートでも、そこに16分を感じられるかどうかなんです。鈴木さんにはそれを感じられるし、すごくノリがいいんです。

鈴木 その8ビートに達するのに30年かかってますから。最初はそのノリがわからなくて、ギターのタメを真似して、どうやったら良い感じの二人のユニゾンになるかを研究して、やっとこの域に来たっていう感じなんです。

RIO 本当に凄いですし、尊敬します。

鈴木 今度ぜひライヴに来てください。スタジオ盤より全然良い8ビートなんで。スタジオ盤ってクリックを聴いてやってるから、それに引っ張られるところがある。ライヴはその点、ドラムとベースが「俺に合わせろ!」的にやれるから、良い感じにできてると思いますよ。

―― 鈴木さんはよく、人間椅子はライヴのほうが良いとまでおっしゃってますもんね。

鈴木 そうですよ。性格的なものなのか、レコーディングってなんかイマイチだなと思ってても、「まあ、これでいいや」って妥協しちゃうところもあるんだよね。でも、ライヴのほうが不思議と良いタメが出る。

RIO 私はシロタマでもビート感を感じられるベーシストが好きなのですが、その中でも鈴木さんとか、レミー(・キルミスター)とか、結構少ないと思っていて…。

鈴木 いや~、それは褒めすぎじゃないですか。

RIO 今なかなかノリのあるシロタマの方は少ないような気がします。みんなクリックに合わせてばかりで……。それはたしかに正解ですけど、私は体温を感じれるプレイが私は好きですね。

■将来、まさかのコラボも!?

―― 今後、お二人には共演の機会もあるかもしれませんよね。

RIO いや、もう是非!

鈴木 徳間仕切りのライヴなんかをやってくれたら、絶対共演できるのにね。

―― たとえばですが、人間椅子とMary’s Bloodが同じステージに立つとしたら、お二人はどんなコラボをやってみたいですか?

鈴木 うーん。

RIO ベースが二人いたら、何ができますかね?

鈴木 RIOさんが音を出して、俺が音を出さないっていう。

RIO ウソでしょ!(笑)

鈴木 俺はアクション専門でやりますよ(笑)。

RIO いやいや。何がいいかなぁ。個人的には、ねぷたを絡ませたいですけど。

―― おっ! いいですね!

RIO そうなると、ウチのメンバーはポカーンとするでしょうね。鈴木さんはねぷたを観るのがお好きとおっしゃってましたけど、一回ぐらいは出てみましょうよ。

鈴木 なにしろ、本物のねぷたで叩いてたっていうRIOさんですから、ドラムのところに行って、ねぷたの囃子を叩いてほしいなぁ。本物のRIOさんが叩くねぷたの囃子に合わせて、人間椅子が「あやかしの鼓」を演奏する。すごい良くない?

RIO いいですね! 「ドン!」ってできるかな?(笑)

―― なんとも贅沢なコラボですね!

RIO 弘前っていう田舎から出てきて、こんな大先輩がいらっしゃることは本当に励みになってるんです。地元が一緒って、やっぱり違いますよ。

鈴木 特に、青森の辺りは同じ県の人をすごい応援するんだよね。その人が良い人だろうが悪い人だろうが、無条件に応援する。幸い、RIOさんは良い人ですけど(笑)。相撲でも、同県の力士を応援するよね。RIOさんは、あんまり相撲好きじゃない? 自分は青森県の力士を毎日チェックするんだよね。

RIO (笑)

鈴木 安美錦って40歳ぐらいの深浦町出身の力士が、最高齢でまだ辞めないで頑張ってる。膝にサポーターをやってて、満身創痍なんだけど、自分を見てるようでね。同じ青森県出身ってことで、励みになるんだよね。

RIO 青森出身とか東北出身ってよく言いますけど、“青森県弘前市出身”ってところまで同じ人ってなかなかいないので、本当にグッときますね。しかも、曲の中にねぷたの囃子の音を使ってらっしゃるし、「りんごの泪」みたいな曲もあるし……。ジャケットにねぷた絵を採り入れたりとか、人間椅子のやること全部、私にとってエモいんですよ。

鈴木 ははは。“エモい”って、また自分のわからない言葉が出てきたな(笑)。いや、自分も同県の後輩がいるっていうだけで、“共に頑張っていこう”っていう気になって良いんだよね。全然接点がなかったのに、Mary’s Bloodが後から徳間に入ってきたじゃないですか。これもすごい縁だなと思ったんですよ。それ以前からライヴを観に来てくれて、「私、弘前なんですよ」ってRIOさんにご挨拶されたことがあって。「機会があったら、ぜひ一緒に演奏してください」って言ってくれてたあのMary’s Bloodが徳間に入ってきて、ますます応援したくなったんですよ。

RIO やっぱり、ちょっと他にない関係ですよね。嬉しいです!

~前編から読む~

 
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●人間椅子
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Ningen Isu /  Heartless Scat(人間椅子 / 無情のスキャット)



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