人間椅子インタビュー


Text by 志村つくね  
Photo by Yoshika Horita
 

■映像作品「苦しみも喜びも夢なればこそ『現世は夢~バンド生活二十五年~』渋谷公会堂公演」について

――渋公での公演、皆さん率直にどう感じましたか?

和嶋 渋公は今まで2回出たことがあって、2枚目の『桜の森の満開の下』と4枚目の『羅生門』を出したとき。2枚目のときはまぁまぁお客さん入ったと思うんだけど、その次の4枚目のときはあまり埋まらなかったと思うんですよ。それ以来、ホールというところではほとんどやってなくて、20年以上が経ちました。そして、ここのところ動員が増えてきて、自然な形で渋公に行ったわけですよ。2013年から自分たちのなかでは ”バンド再デビュー” だと思ってやってたんですけど、そこから2年で渋公に行けたっていう、順調な新人バンドの歩みができたと思いまして。順調にいけてソールドアウトしたという、こんな絵に描いたような素晴らしい出来事はないなって思ってます。

――鈴木さんはどういうふうにお考えですか?数年前はこういう状況を想像されていましたか?

鈴木 数年前の状況で渋公やってたら、きっと舞い上がってうまくいかなかったと思う。少しずつ小屋が大きくなって、動員が増えていったのがよかった。ま、ノブの宣伝のおかげなのかもしれないけど(笑)。

ノブ いやいや、たいしたことしてない(笑)。

鈴木 だから、そんなに普段と変わんないーなーと。そんなに力まずやりきろうと。お客さんは立つんじゃなくて、座席があって座れてイキイキしてるし。感想のお手紙にも「歳だから座れてよかったです」っていうのがたくさんありましたね。ホールは音の面ではイマイチだけど、開演前の1時間の待ち時間でもお客さんが座れる。演奏時間も疲れたら座ればいいし、いいこといっぱいありますよねー。

――ノブさんは渋公での光景はいかがでしたか?いろんな方が観に来られていましたが。

ノブ 俺はもう、ただただ、「うれしい!感激!」っていう感じで。声援もライブハウスで受けるより大きくて、ホールってこういう造りなのか、と。人の多さもあって、ゴーッてくるし。応援してくれるファンの人もスタッフもそうなんですけれども、あのときは、俺らの友達レベルの人もすごく喜んでお祝いムードで観に来てくれてたんです。もう本当にありがたいなーっていう。”感激” のひと言に尽きますよ。

――客席から観ていたら、老若男女、和装の人もいればバンドTシャツの人もいました。

和嶋 そうそう。わりとコスプレ的な人たちもいて、すごく一体感があったよ。

――人間椅子というバンドの世界観を吸収した格好で臨んでいるという、祝祭の日に相応しい雰囲気でした。それが今回、見事に映像作品に封じ込められましたね。サウンドも非常によくて、人間椅子というバンドの魅力が伝わってきます。

和嶋 全曲余すところなく入れたわけだけど、最初やっぱりカタいんですよ。緊張してる。でも、後半になるとすごく伸び伸びとやってるし、演奏も物凄くよくなってるんだよね。あと、裏話として、現代のテクノロジーにも感謝してますよ。デジタルだから、「ここはキツいな……」ってところは微妙に直せたりするんで(笑)。歌詞間違っててもリハのやつ持って来たりとかしたから。

鈴木 そんなの書かないほうがいいんじゃないの!(笑)

和嶋 やめようか(笑)。

――ジューダス・プリーストのライブ盤みたいな?

鈴木 『イン・ジ・イースト』ね!

和嶋 ヴォーカルを全部録り直したやつでしょ?

――そういうことではないんですよね?(笑)

和嶋 ないです!

――素材を活かした映像になっている、と。

和嶋 ほぼ98%が素材ですよ。

一同 (爆笑)

ノブ なんかフォローしてるみたいだけど、ほんとに、ちょっとだけ。

和嶋 だからこそ、全曲入れることができたし、あの熱気をそのまま閉じ込めることができたんじゃないのかな。全曲入れないと、全体の流れがわからない。完璧には伝えられない。

――見ていて、それが嬉しかったです!もちろん長年のファンも喜ばれると思うんですが、初めてこの映像作品で人間椅子に触れる方もびっくりすると思うんですよね。ロックの凄みが感じられて。

和嶋 はい。まさにロックの演奏だと思うんですよ、僕たちは。作品としてはデジタルで録りますが、演奏自体は完全なアナログなわけですよ。同期ものとかやらないし、何かありものの音に合わせてやるわけでもない。全部生の演奏なわけです。ロックの熱い感じ。僕たちが熱いと感動してきたものをそのままお客さんの前でやりたいんですよ。

――それがすごく伝わる内容です。ステージ上で皆さんがコミュニケーションを取られる姿も見どころのひとつだと思います。何かステージ上で印象的なやりとりはありましたか?

鈴木 渋公がなくなるから、ここでやるのは最後だと思って、「楽しくやろう!」みたいな目でお互いを見てたけれど。

和嶋 自分たちはこれからもどんどん活動していくわけだけど、渋公でやるのはきっと最後だからね。そして、一昨日(注:このインタビューの収録は筋肉少女帯人間椅子の渋公ライブの翌々日)もやってしまったわけだけれど(笑)。

鈴木 ホールでのライブも今後はそんなに多くはないだろうから、「このホールを楽しみましょう」みたいな。

ノブ 印象的なやりとりとしては、本番始まる直前のSEが鳴ったときに3人で袖にいるじゃないですか。いざ出るぞってときに、俺、もう感激しちゃって。「やばい!ウルッとくるかな」って思ってたら、研ちゃんがいつものようにひと言言うんですよ。「じゃ、今日もいつもどおり。普通の演奏で」とか。

鈴木 あはは。言ってた、俺?

ノブ 言ってた、言ってた(笑)。「今日も落ち着いていこう」。オズフェスのときも言ってたよ。

鈴木 ホントー!?

ノブ・和嶋 一昨日も言ってたよ!

鈴木 口うるさい奴みたいだなぁ(笑)。

和嶋 毎回言ってほしいね。そうすると、気が落ち着くから。

ノブ けっこう昂ぶってる気持ちがあそこでスッと「ちゃんと演奏しよう」っていう気持ちになれる。舞い上がらないでできる。地に足が着いてない状態で演奏するのと落ち着いてやるのと、絶対違うと思います。

――いい話じゃないですか!

鈴木 そういうこと言った記憶はあるけど、毎回言ってるとは思わなかったな。

ノブ 毎回っていうか、大きい会場だね。舞い上がってしまいそうなとき。

――会場が大きいと、ライブハウスと比べて気持ちが入りすぎちゃうというか。

鈴木 だから、自分に言ってるようなもんなんですけどね。だいたい、力が入りすぎてうまく弾けないっていうパターンになるわけです。俺らだけじゃないと思うけど。そこで力が抜けて始められたら、もう7割方成功したようなもんです。

和嶋 あと、渋公はMCのやりとりも楽しかった。DVDにはそんなには入れなかったんだけど、いつも通りにやろうっていう意識で最初スタートしたから、MCもライブハウスでやるみたいな感じ。でも、「和嶋くん、やっぱり滑舌いいですね!」って研ちゃんに言われた瞬間に噛みまくるという。

一同 (爆笑)

和嶋 やっぱり俺、動揺してるんだ、と。すごい前半噛みまくりのMCがあった。

鈴木 以前に和嶋くんがラジオでしょっちゅうプロモーションしてたんですよ。すごい”ラジオしゃべり” になってて、「ウマい!」と思ってたんだよね。で、ポロっとMCでそう言っちゃった。

和嶋 意識してしまいましたー(笑)。そういうことを含めて全部楽しかったね。そういうのって、失敗じゃないし。

――聞けば聞くほどいろんな裏話が出てきそうですね。それだけでドキュメンタリー映画が作れそうな(笑)。

和嶋 アンコールで鈴木くんがねずみ男に、僕がウンモ星人になった。昔の衣装で。あのときは楽しかったね!全員、ロックの格好じゃないからね。「このおじさんたちは何をやっているんだろう?」と思いながらの、シュールな映像。笑いながらやっちゃったよ。

――お互いが楽しまれている印象でした。

鈴木 「見知らぬ世界」も「陰獣」もワウペダルを踏むんですよ。ギター弾いてるだけでもおかしいのに、あの格好でワウ踏んでるのがすごいおかしかった!なんか水飲み鳥みたいになっちゃって(笑)。

和嶋 マスコットみたいな感じになってましたね。

――あのときは皆さんが子どもに戻ったような顔をされていたので、よっぽど楽しいんだな、と。

ノブ いつでも楽しいんですけどね。やっぱり、渋公で25周年っていうのは、ひとつの大イベントでしたね。

和嶋 25周年のベスト盤のタイトルが「現世は夢」。渋公の公演名も「現世は夢」でやろうと思って。夢を自分たちで作ってる気がするんだよね。夢の中で生きてるっていうか。あの感覚は、ちょっと言葉では言えないんですよね。ステージにいながらにして、夢の空間をやってる感じ。まぁ、悪夢なのかいい夢なのかはわからないけど(笑)。とにかく、ひとつの時間や舞台を作っている感じがします。僕たちはそれを作り出しながら皆さんと楽しんでいるんだな、と。

ノブ 僕らはメンバー3人で、あと、徳間のスタッフだったり楽器をやってくれてるマネージャーがいたりするんですけど、渋公のワンマンのステージを作り上げる何か月も前から全部自分たちで作り上げていったっていう気持ちもあって。

――手作り感もありつつ、経験の積み重ねもあるという。

ノブ わからない部分がない状態でどんどん駒を進めていく。ソールドアウトした瞬間もメンバーみんなで一緒にいて、全部をずっと共有してた。あのとき成功したっていうのはよかったですね。

和嶋 それはあるね。結局、2枚目を出した頃は事務所に入ってたんですけれど、デビューして間もないから、よくわからんのですよ。わからないままにホール公演をやって。今は本当に、歩いてそこに行ってるという感じがする。

ノブ 下見も僕が行きましたからね。

――渋公の下見を、ですか!?

ノブ 打ち合わせも僕が行きました。向こうのスタッフが驚いてましたよ。「ご本人さんですか?」って(笑)。

――ねずみ男とウンモ星人の登場はもちろんサプライズだったんですが、一貫して普段通りの人間椅子を見せるという姿勢が感じられました。

和嶋 それは最初から決めました。そうすべきだと思ったんですよ。いろいろどうしようかっていう話もして、頑張って舞台を組んでやるのもアリかっていう話もしたけど、結局自分たちの動員が増えてきたのは、ありのままにロックを演奏してきたから。それをそのままの形でやるべきだろう、と。普通ああいうところでやると、ギターだとすればマーシャルの壁とかやるのかもしれないけど、そういうのはやめよう、と。むしろ何もない、そういうのを見せないぐらいのシンプルなセットでいつも通りの僕たちをやるべきだ、と。

ノブ ギターアンプ1個だもんね。ベースアンプも1個、真ん中にドラムセット。

鈴木 俺は壁作ろうと思って……。

和嶋 あっ。研ちゃんは実は2つあったんだよね。

鈴木 2つ……。もっとやりたかったぐらいなんだけど。

ノブ そういうアイデアもあったんだよね。ギターアンプもいくつか置こうか、とか。

鈴木 やっぱりさ、俺、外タレのDVDしょっちゅう観てるから、そういうの観るとどうしてもねぇ……。

一同 (爆笑)

鈴木 俺は ”壁作りたくなる派” なんだよ。でも、2つぐらい、いいんじゃないの?

ノブ 全然いいよ!

和嶋 レッド・ツェッペリンのマディソン・スクエア・ガーデン。あのライブがすごいシンプルなのよ。あんなデカいところでジミー・ペイジがギターアンプ1個だけでやって。しかも広いところなのに、メンバーがこじんまりと固まって演奏してるんだよ。お互いの音を聴きながらやるように。それが「すげーカッコいいな!」と思って。『狂熱のライブ』だっけ?あの影響もあって、シンプルにいこう、と。

鈴木 ツェッペリンもずーっとアドリブ効かせてやってるから、ああいうふうになるんだよ。近くに寄っていく。

――以前、みうらじゅんさんが人間椅子のことを “日本にいながらにして外タレの風格があるバンド” と評されていたんですが、僕も同感です。それぐらいのスケールが感じられる渋公ライブだったと思うんです。

和嶋 いやいや。とにかく、リスペクトの気持ちだけでやってるんですよ。リスペクトしてるからこそ、オリジナリティのある人間椅子のサウンドでいきたいと思うわけです。

――どこからどう聴いても観ても、オリジナルの魅力が詰まったバンドだな、と。洋楽の大物ロックアーティストと比較して論じられることについては、どうお考えですか?

和嶋 いやー、恐縮ですよ!「そこまでじゃないですよ、僕ら!」と思っちゃいますもん。だって、他の方たちはもっと、世界中でやってるビッグなアーティストなんだから……。

鈴木 曲は勝ってるんじゃないかなと思うよ!

和嶋 曲はイイのがいっぱいあるなぁとは思うよ!おかげさまで最近はネットで世界中に発信できるようになって、海外の方から「素晴らしい!」というコメントがあったりとか、「なんでアメリカに来てやらないの?」とか問い合わせが来るようになりましたからね。欧米圏の方々が僕たちのサウンドを気に入ってくれてるんだとすごく勇気づけられています。

――海外から注目されるという喜びもありつつ、非常に若い人たちも渋公で目立ちましたね。

鈴木 どうやって見つけてくるんだろうっていう。

――時代が変わり、カルチャーが変化するなかでブレずにやってこられて……。

和嶋 それはもう、感謝しているわけです。今まで自分たちはアルバムを作って頑張ってるんだけど、なかなか今一つ普及していないっていう苦しい時期が続いたんです。お客さんが増えてきたっていうのは、ネットの口コミで広まっていったのが、ひとつの理由としてあると思いますよ。そこを利用するっていう言い方は変ですけれど、ひとつの宣伝の窓口として今後も使いたいです。

――こういうバンドが日本にいるということで勇気づけられている人がすごく多いと思います。人間椅子をきっかけにロックの古典の森に分け入っていく……ディープ・パープルやキング・クリムゾンのCDを集める喜びを見出す若い人も増えているはずですよ。

鈴木 それこそ素晴らしい循環ですよね。

和嶋 そういう古典を聴いてもらえば、わかると思うんだよ!僕たちがああいうのに負けない音楽をやろうとしてるということを。それをより理解してもらえると思います。

鈴木 そのわりには、そういうバンドがなかなか出てこないよねぇ。

和嶋 そうだね。なんでだろうね。

鈴木 いざやるとなったら、別物なのかね?演奏するとなれば。

和嶋 そこで僕が思うのは、もしかしたら”売る”っていう考え方が働いてしまうのかもしれないね。売るための音楽を作ろうとすると、ちょっとズレるんだよね……。本当はイカしたロックをやりたいはずなのに、「売れるためにはこういうメロディにして」と考え出すと、おそらく別の方向に行っちゃうんだよ。あまり批判的なことを言っていると受け止めてほしくないんですけど……もちろん、売れるための曲を作っている人は素晴らしいんですよ。みんなにいい曲を広めようという考え方でやってるから。ただ、ロックのあの生々しさをやるためには、売れるっていう考えは一回取っ払ったほうが、よりパッションのあるものが作れるのではないのかなと。

鈴木 シングル出して売るんじゃなくて、アルバムで売るという。僕の想像では、またハードロックの時代が来るはずだったんだけど、なかなか来ないんですよねぇ……。

和嶋 いやいや、来てるよ!世界的には確実に来てる!

ノブ そう、来てるんじゃないかな。

鈴木 オールドタイプの?メタルじゃないハードロックが?

ノブ そこまで突き詰めていくとアレだけど(笑)。でも、ハードロックとへヴィメタルがちょっと違うものだっていう認識がだいぶできてきたと思う。

和嶋 僕らとしては、ゴリゴリのへヴィメタルではないと思ってやってんのね。それはレミー(・キルミスター)も言ってるじゃない。「自分たちはへヴィメタルではない」って。どう聴いてもへヴィメタルのような気がするけれど(笑)。

鈴木 でも、レミーの言ってることはわかるよ。音が歪んでるからそう聴こえるけれど、やってるのはロックンロールなんだよ。

和嶋 そうなんだよ。様式美じゃないからね、モーターヘッドは。僕らも様式美ではないことをやりたいのよ。ハードで「なんだこれは!?」っていうことをやりたいんです。

――いろいろ聴いてきた末に人間椅子に辿り着いたという人も増えているんじゃないでしょうか。

和嶋 若い方はそういう人多いと思います。知り合いの方と話したときに、息子の友達が好きとか、必ず身近に好きな人がいるという話を聞きますね。若い人にも年配の方にも、浸透してるんだと感じます。

――サブカルチャーという枠組みのなかの人間椅子だけでなく、その音楽に触れて、衝撃を受ける人がいると思います。たとえば、初めてキッスを聴いたときの喜びと同じようにして入っていく人が多いように思うんです。

和嶋 それはいちばん嬉しいあり方ですね。曲を聴いて「あっ!」て思ってくれるというのが。僕たちはもちろん、サブカルチャー的な括りだとは思ってますよ。いわゆるビッグでメジャーなアーティストではないと思っている。でも、音楽としてはロックがロックだった時代の正統なものを受け継いでやってるという意識なんですよ。

――ティーンエイジャーが聴いたら誰でも喜ぶような……。

和嶋 そう。血が騒ぐような音。

――MCでは、”30周年で武道館” というお話が出ましたけれども、お客さんは当然のように受け止めていたんじゃないでしょうか。大きい会場で味わう人間椅子っていいなあと思いました。

和嶋 ここのところ会場がどんどん大きくなっているじゃないですか。昨日スタッフの皆さんと話していたのは、お客さんと一緒に旅をしている感じなんですよね。ロックという旅をしている感じ。僕たちが曲を通して道案内する ”ロックのミステリーツアー”(笑)。その途中に武道館があるといいなぁと思いますよ。旅のひとつの地点として、そこを目指したりしながら。お客さんも一緒に移動して喜んでいる気がする。

――夢が詰まったお話ですね!

和嶋 ただ、ツアーだからね。もしかしたら、思うべきところに行けないこともあるかもしれない。でも、いいんですよ。旅だから(笑)。どのようになろうとも、続けている限り。

――少し話が逸れてしまいますが、映像を見ていたら、鈴木さんが袈裟を脱ぎ捨ててステージ前方をハンドマイクで練り歩くという迫力のシーンがありました。あまり見られない光景でしたね。

鈴木 そうですね。普段は「やらせて頂いてよろしいでしょうか?」みたいな感じだけど(笑)。25周年で渋公ということで、記念だからいつもと違うことをやろうと思って。せっかく来てくださった皆さんの期待に応えるべく。

――感情が昂ぶってすごいことになってるのかなぁ、と。ド迫力を感じたもので(笑)。

和嶋 研ちゃんは渋公でライブをやるということになって、「ハンドマイクでやる!」と意気込んでました。練習して臨みましたから。

ノブ しかもあの瞬間のためだけにワイヤレスマイクが……。

鈴木 簡単に脇からピュって出てくると思ったら、電波の許可がいるという……。マイクを使うのにも、こんなに面倒くさいことになってるんだと。

和嶋 そのときの曲が「冥土喫茶」という速い曲なので、私、いちギタリストとして大変ツラかったです(笑)。ずっとダウン・ピッキングで、キツかったな~。あれをもう1分長くやられたらと思うと……。

鈴木 そういうときは修業だと思って頑張れば……(笑)。

和嶋 いや、頑張りましたよ!「ここでオルタネイトにはできない!」と思って。あれ、カッコよかったねー。研ちゃんのかけ声でみんながイントロに入るっていう。

――事前に演出上の意図があったということですが、観ている側としては、とても自然に感じられました。「研ちゃん、やっちゃったよ!」というロックの初期衝動のように受け止めました。

ノブ そういうふうに映ってるんだとすれば、すごく狙い通り!

和嶋 流れるようにいったんだね(笑)。

――それはもちろん、和嶋さんとノブさんにも言えることで。どの曲にもそういう瞬間が訪れましたね。渋公のライブだからこその言霊を感じました。

和嶋 いいライブでしたよ!アンコールの「なまはげ」で真ん中ブレイクしてノブくんが銅鑼を叩くんだけど、「おぉっ!すげー叩いてるよ!」って思って。予定よりだいぶ長い(笑)。それが楽しかったんだよー。1回か2回かなと思ったら、すげー叩いてる。これがロックだなと思いましたよ。

――ノブさんはこの日も「蜘蛛の糸」で元気な声を披露して盛り上げてらっしゃいました。

ノブ もう、あそこが俺が行く唯一のところだと思うんで、すべてをそこに……(笑)。あとは、下手するとずっとしゃべっちゃうタイプなんで、しゃべらないように。

――DVDを観て、改めて見せ場ばかりだと思いました。3人が3人ともメインヴォーカルをとるという点が、ロックが好きな人にとっては大きな喜びだし、初めて観た人にとっては驚きになります。

和嶋 そう。飽きないと思うんですよ。

鈴木 キッス聴いてるからっていうのもあるよねー。

――舞台美術などで奇をてらったことをしなくても、シンプルに音楽に耳を傾けていれば盛り上がるというのが、オーディエンスによく伝わったんじゃないですかね。

和嶋 やってるほうとしても、いいんですよ。ずっと歌ってると、たぶん疲れる。疲れるというか、楽器を弾きながら歌うんで、ただやるよりも1.5倍のエネルギーを使う。で、ヴォーカルが替わるんで、歌わないときに声を休めることができる。いい具合にできてるなぁ、と。

鈴木 観てるほうも飽きないしね。飽きないように、飽きさせないようにっていうのが、俺らの曲順の決め方なんですよ。

――この日のセットリストも新旧織り交ぜて、なかにはすごく懐かしい曲もあったりしたのですが、「これでいこう!」というのは、すんなり決められたんですか?

鈴木 俺がやりたいって思うものを並べたら、こういう感じになったっていう。

和嶋 鉄板みたいな感じで、すぐに決まりまして。

鈴木 鉄板だけど同じ曲順で2回ライブやらないっていうのが、俺らの考え。デビューしてからずっと、同じセットリストってないはずなんですよ。

和嶋 ツアーのなかで必ず変えるから。

ノブ その土地でしかやらない曲っていうのを、できるだけ1曲でも……。

――訪れる人にとっては、おみやげとして持ち帰ることができる曲ですね。

和嶋 そこでしか味わえない空間。そして私たちも新鮮な気持ちで毎回のライブに臨める、と。

鈴木 だから、渋公とはいえ、あまりやらない曲も入るんですよ。

――演者と観客の呼吸が非常にうまくいっていましたよ。

和嶋 ありがとうございます!新譜のツアーじゃなくて、ベスト盤のツアー的なものなので、ちょうどバランスよく古い曲から新曲までやることができました。

ノブ でも、1, 2曲目に新曲を持ってきてるよねー!それがすごく良かったと思う。

和嶋 攻めの姿勢を感じる(笑)。

――ベスト盤に収録された新曲ですね。それがまたいいんですよね。

和嶋 全然守りに入らないっていう。

――それをセットリストの途中に入れるのはありがちですけれど、この大舞台でいきなり冒頭に持ってくるという。

和嶋 出だし2曲が新曲だからね!

ノブ しかも難しい(笑)。

和嶋 ほんと、新人バンドのつもりでやってますよ。そういうところを含めてね。あと、映像としてオススメなのは、全編通して観て思ったのが、「あっ!現代の映像作品だ!」ということ。カメラの切り替わり方や撮り方が。僕らはもうおじさんだから、最初すごいカメラ切り替わるなーと思ったんだけど、今の最先端の技術なんだよね。わりとすぐ切り替わるわけ。その時代の先端をいっている映像スタッフの方に頼んだので、そういうふうになったんだと思います。だから、若い人は全然飽きないと思いますよ。

鈴木 ちゃんとギターソロのとき、ギターにカメラ行ってた?

和嶋 ギターにずーっとっていうふうにはならない。編集の最後のあたりに立ち会ったんだけど、あまりにギターソロが切り替わるんで、「もうちょっとギターお願いします」って言っちゃった(笑)。「このフレーズだけは手元お願いします」とか。でも、基本あまり口出ししないようにしてた。客観的に見てカッコいいというほうを選んで彼らは作ってくれてたので。

――最先端の技術を駆使した、血の通った映像に仕上がっている、と。

和嶋 まさに2015年の映像作品ですよ。そしてまた、Blu-rayは画質がすごくいいですね。

鈴木 なんか営業の人みたい(笑)。

和嶋 ちゃんと観たわけ、Blu-rayを。びっくりするよ!全然DVDと違う。

鈴木 DVDでも十分キレイだけどね。

和嶋 「ちょっとキレイすぎるんじゃない!?」ぐらいの画質だったよ。

鈴木 顔のシミまで映ってんだ……。

和嶋 ヨダレとか映ってるんだけど、まぁいいか、おじさんだし。

一同 (笑)

和嶋 音もいいです、Blu-ray。それがセールスポイント。

――ここで少し角度を変えましょう。ライブ映像以外にも今回は2曲のビデオクリップが収録されていますね。「なまはげ」と「宇宙からの色」。で、「宇宙からの色」のヴァージョン違いのものが収録されることになったとか?

和嶋 今までYouTubeにupしていたものとは、少し変えました。YouTubeに上がってたやつには、”HORROR AND TERROR” っていう英語のテロップを入れてたんですが、それをなくして画だけにしました。

――そこには何かこだわりが?

和嶋 ぶっちゃけの話で、「宇宙からの色」のPVを作るときに納期ギリギリだったんですよね。テロップを入れたいんだけど、入れ方の詰めが甘かったんですよ。テロップを入れてはみたものの、ギリギリの納期で入れちゃったから、いかにも上乗せした感じになって、浮いちゃったんだね。で、知人から「あれ、なんかおかしくないですか?」とか言われちゃって(笑)。しかもそれが一人じゃないんですよ。けっこう何人かに言われちゃいまして、若者の意見をしっかり聞かなきゃいかん、と。最初編集してくれた人が作った状態に戻すべきだなと思いまして。むしろ、今回のヴァージョンでオリジナルに近づいたわけです。

鈴木 あれはどうすりゃよかったのかね?ちゃーらーららー、ちゃららららー♪(「宇宙からの色」のイントロを歌い出す)でバーンと文字が出りゃよかったのかね?

和嶋 もっと馴染む感じの色彩とか、そういうことなんだろうね。

鈴木 古臭い感じでやればよかったのかね?

和嶋 それをもっと作り込んでやればよかった。テロップひとつでもそうなんだと思ってさ。勉強になりました。

――この2曲の映像が盤に入るのは初めてということですね?

和嶋 そうです。ときどきPVを作るんですけど、出せるタイミングで入れとかないと、いつまで経っても出せなくなるんで。この2曲はまだ盤の中に入れたことがなかったので、ここだ、と。

――こちらの映像も要チェックですね!なかなかこういうバンドはないと思いますよ。音の面でもそうですが、成り立ちからここに至るまで。

和嶋 ストーリーもね、なかなかないです。

――このDVDの発売を記念したツアーが夏に控えています。それも期待していいといいことですね?

和嶋 楽しみですよ!新譜を出してのツアーじゃないんで、またいろんな曲がやれる。自由にやれるから、これはこれで楽しいです。

鈴木 じゃあ、DVDと関係ないんだね(笑)。

和嶋 いやいや(笑)。DVDに入ってる曲もやるけど、同じことをやってもしょうがないんで。渋公でやりたかったけどやらなかった曲も入れていこうかと。

――こちらでもいろんな人間椅子の音楽が楽しめると。

ノブ もちろんですねー。このDVDに入ってない曲をきっといっぱいやるんだろうなって思ってます。

――これからの展開が楽しみですね!

和嶋 渋公やったから、「はー、もう終わったー!」っていうんじゃなくて、旅は続きますね。

――渋公がゴールではなくて、その先に何かが待ち受けている、と。

和嶋 会場だったり作品だったり、私たちの活動の旅はまだまだ続くということを言いたいです。

――好きなものを極めていく。やりたいことをやっていく。

和嶋 ロックをやっていくということですね。会場が最寄駅みたいなものです。そこで楽しいことを毎回やっていく。宿泊地・寄港地みたいな(笑)。

――ファンの皆さんもそれに着いていけば、すごく楽しい旅を体験できる、と。

和嶋 そうです!
 

■筋肉少女帯人間椅子の渋公ライブ

――2015年6月7日の渋谷公会堂で筋肉少女帯と共演。”筋肉少女帯人間椅子” としてのデビューライブでもありました。あの公演について、ひと言ずつ感想を……。

和嶋 1月の人間椅子で「もう渋公でやるのはこれで終わりか……」って思ってたら、またやることができたという(笑)。なんかこんなにラッキーでいいんだろうかと思いましたよ。たぶんみんなが言うことなんだろうけど、2回目だから1回目よりリラックスして楽しめたんですよね。筋少は友達だし。最高の祭りだったと思います。

――それが轟音にも表れていましたね!鈴木さんは?

鈴木 もともと仲のいい筋少だけど、このコラボのおかげで、より親密度が高まりました。いつもの俺の立ち位置には本城(聡章)さんがいるんだけど、今まではちょっとお互いに絡みづらかった。でも、今回は肩なんか組んじゃったりしてね(笑)。やっと、本城さんといい画ができたなーと思いました。

ノブ 俺のほうから見てると、右側では研ちゃんと本城さんが背中合わせになってる。反対側では和嶋くんと橘高(文彦)さんが見るたびにじゃれてる(笑)。

和嶋 べったり二人でじゃれてるんだよね!「あっ、内田(雄一郎)くんのところに行かなきゃ!」って思うんだけど、橘高くんとギターでべったり(笑)。

ノブ あれ、楽しそうだなと思った!

鈴木 本当はもっと内田くんと絡みたかったんだけど、大槻(ケンヂ)くんがその間にいて、行きづらいんですよ(笑)。その前を横切るわけにはいかず……。そういう制約がありましたよね。誰かの前に行って、その人が歌えなくなるというのを避けなきゃいけないし。

――ノブさんはどう感じられましたか?

ノブ 1月の渋公もそうだったんですが、今回の渋公もお客さんの「楽しもう!」という気持ちがドーンとくるから、めちゃくちゃ気持ちよかったです。やっぱり、「バンドっていいな~!バンドって楽しいな~!」って思いましたね。みんなが音で会話しているようなもんじゃないですか。一人ひとりのグルーヴがひとつになってドーンと前に出せるから、やってて充実感がありましたね。

――『地獄のアロハ』の限定盤に封入されたHISTORY BOOKにもあるように、軽音みたいな感じっていうのはこういうことなんだなぁ、と。

和嶋 ”プロの軽音” っていう言葉がよかったよね!

――HISTORY BOOKのなかで橘高さんと内田さんがおっしゃった言葉ですね。

和嶋 贅沢だよね。渋谷公会堂ソールドアウトで”プロの軽音” のライブがやれるっていう。

ノブ カバー曲もやってね。

鈴木 橘高くんと和嶋くんが好き放題ずーっと長く弾いてるんですよ。後ろで俺とか三柴(理)さんとか長谷川(浩二)さんが「まだやってるよー」って、ずーっと目で会話してるんですよ。

一同 (笑)

鈴木 「終わんねー」って、みんなが苦笑いしてるの。

和嶋 一人だと1で終わるところを、二人いるから3ぐらいやっちゃうんだよね。2倍じゃなくて3倍ぐらいになっちゃうの。

鈴木 長谷川さんのニヤニヤがすごいおかしかったんだよねー。

ノブ たしかにニヤニヤしてたねー。

和嶋 そうだった。「釈迦」のとき、ひとしきりやって後ろ見たら、みんな「やっと終わったんか……!」っていう顔してて、「あー、やっちゃった!」と思った(笑)。

ノブ 僕はあの日、長谷川さんとツインドラムをやったのが印象に残ってます。レコーディングでは、研ちゃんと内田さんとか、橘高さんと本城さんと和嶋くんとか。みんなそれぞれに同じパートの人がいて。で、ドラムが俺だけだった。ライブではずっと長谷川さんとアイコンタクトを取りながらやったのが楽しかったです。「りんごの泪」のとき、長谷川さんが俺のほうをずっと見てるの。「ここリットですよ」って合図すると、こっちを見てニヤッとするんですよね。「リットだったよね」みたいな顔で。

和嶋 驚きだったのは、なんかすごい呼吸が合ってたんだよね。二人のビートが合ってた。

ノブ 長谷川さんは合わせるということに慣れてらっしゃるのかもしれない。アルフィーって一時期ツインドラムだったじゃないですか。長谷川さんも「ここが3連のフィルだ」って合図するんですよ。その合図がくると、やれる。ずっと同じ譜割りで二人でやると面白いっていう。

和嶋 ははー。なんちゅう贅沢な(笑)。

ノブ 普段のビートのところは長谷川さんと僕と違うことをやるんですよ。テンポだったりビートだったりグルーヴだったりが合ってるんですけど、ちょっとずつ細かいことを変えて。僕がハイハットをずっと4つやってたら、長谷川さんが8つやってたり。フロアでドロドロってやってると、長谷川さんがやめたり。その逆もあったり。この日だけでツインドラムのアレンジができた感じです。面白かったです。

――ああいうのを観て、「バンドやってみたいな!ロックっていいな!」って思う人たちはいると思いますよ。

和嶋 相当いると思う。楽器やってる人も絶対楽しかったはずですよ!また機会があればやりたいです。 ‐ぜひ!どんどんやって頂きたいです!

■インタビューの直前にファンの皆さんからTwitterで質問を募集。それに答えるうちに、話が思わぬ方向に……。

和嶋 できればもう演奏したくない曲……。

――「これまで作った曲のなかで、大変だから、できればもう演奏したくない曲はありますか?」という質問ですね。

和嶋 どの曲もチャレンジしたいけどね。だから、これは答えとして面白くないかな(笑)。演奏したくない曲がないってことだからね。

鈴木 開演前のBGMについての質問(「場内BGMの選曲にメンバーが関わることはありますか?ユーライア・ヒープがかかって嬉しくなりました!」)がいくつかあるから答えておくと、お客さんを入れるBGMは、僕がだいたい全部やっています。大きいライブのときは、CDをかけるんじゃなくて、たとえば筋肉少女帯人間椅子の渋公のときは、僕が編集したユーライア・ヒープのベスト盤をかけたんです。1月の人間椅子の渋公では、ブラック・サバス・ベストを俺が作ったんですよね。 (※『ヘドバン Vol.6』誌にセットリスト掲載)

鈴木 それを僕が編集して。普段のライブではCDをかけたりするんですけどね。BGMは僕がやらせて頂いております。

――あのBGMは一気に世界観に引き込んでくれますね。演奏が始まるまでに体ができあがります。

鈴木 もしそのBGMを聴いて、「これいい曲だけど、なんてバンドだろう?」と思ったり、「これよかったから、レコード屋さんで探してみようかな」と一人でも思えば、僕の作戦は成功ですよ。 “70年代ハードロック普及協会” の会長みたいなもんなんで(笑)。

和嶋 そういう70年代のロックがかかるから、僕たちも気持ちが楽しくなるわけですよ。「そうだよ。これをやるんだよ!」っていうのを改めて思うから。自分たちもステージ前に高められる。あとは……「CDが売れない時代となり、以前とはプロモーションのあり方が変わってきたと思います。純粋な創作意欲とは別に、プロモーションに対しての心境の変化を感じた時期はありますか?」

――あっ!それ聞きたかったです。

和嶋 これは全員あると思います。やっぱり、僕たち低迷といいますか、低迷ではないんですけどね、ちゃんと活動してたから。ただ、それほど動員が増えない時期を長年経験したので、お客さんは大事だなとつくづく思ったんですよ。露出も大事だし、みんなに楽しんでもらうために自分たちは活動してるんだっていう意識の変化があったので。だから、プロモーションの機会があれば、できるだけ出ていこうと思うようになりました。若い頃はなんか面倒くさいなと思ってたこともあった。でも、そうじゃない、と。みんなに聴いてほしいし、みんなを楽しませたいわけですよ。そのためにはベストを尽くさなきゃいけないんで。プロモーションをやれば、皆さんにより伝わる度合いが高まると思う。

――以前、動員が増える過程でアンケートをとられたとか?そういうふうにお客さんの声を聞いて心境に変化があったりしたんですか?

和嶋 皆さんが協力してくれるということがわかったし、みんなが応援してくれてるんだっていうのを、以前より肌で感じるようになったのね。お客さんの熱気というか想いが。それが伝わるから、こっちも想いを伝えたい。その場所が、ステージとプロモーションだったり、盤にする曲だったりするんですけれども。お返しできることがあれば、こういうこともやります、と。だから、お客さんの顔をときどき見るようにしてるんですよ。ちゃんと楽しんでくれてるかなー、とか。ちょっと飽きたような顔をしてる人が仮にいたとしたら、もう少しちゃんと頑張ろうとかさ。そこで心はまったく折れなくて、もうちょっと頑張らないとダメだ、と。ライブハウスとホール、どっちにしても同じですよ。お客さんの顔を見るようにしてます。

――ノブさんへの質問もありますね。「ライブでは『蜘蛛の糸』が定番になっていますが、他のアニキ曲も聴けますか?『赤と黒』とか?」ということですが。

ノブ 絶対聴けますよ(笑)。今はたしかに「蜘蛛の糸」をやる機会が多いんですが、それは単純にベスト盤に入ってるから。そして、最近の曲だから。その時々で新しめの曲をやろうと思ってます。この前のツアーは「宇宙船弥勒号」をずっとやってましたし。

――ツアーによって、その時々の趣向の違いを楽しめる。地方に行ったら、こういう曲もやるよ、と。

和嶋 そういうことです。

ノブ 僕もライブ中に1曲はそういう時間があるんで、実はすごく嬉しいんです!

一同 (笑)

和嶋 いや、それ、わかりますよ。

ノブ ワンマンのときに1曲歌えるっていうのが、俺はすごく嬉しくて……。

鈴木 あぁ、なんだ。嬉しいって、そんなー。当然なのに(笑)。

ノブ 当然なんだけど、それも「バンドって楽しいなー!」ということにつながる。

――お三方それぞれに強い光が当たる場面がちゃんと用意されています。

和嶋 ノブの曲のときは僕と研ちゃんはお休みなんで、二人でずっと動けるんだよ。それもまた楽しい。違う見せ方ができるので。

ノブ ダックウォークみたいなことをやったりとかね。

――”全部のせ” みたいですね(笑)。

和嶋 そうそう!僕らは”ロックの全部のせ” ですよ!ちょっと腹壊しそうなぐらいなんですけどね(笑)。

――ライブパフォーマンスを観ていたら、いろいろ思い出します。AC/DCやらキッスやら、いろんなものが詰まっていて。

和嶋 そうだねー!ロックの見せ場をやってるんだ。自分たちのことを褒めたらナンですけれども、僕たち、よく勉強してるねー。

鈴木 自分で言うのもナンだけど、サービス精神があるんだよ。

ノブ 健康の秘訣に関する質問とか、面白いですね。

――「筋肉少女帯人間椅子の渋公でも素敵な跳躍を見せた和嶋さんですが、アラフィフの皆さんの健康状態が知りたいです」という質問。

鈴木 和嶋くんの健康に対する姿勢が半端じゃないんですよ。

和嶋 いろいろ試行錯誤中です。今年に入ってから、ちょっとベジタリアンをやってみてる。

――ほう!ベジタリアンですか!?

和嶋 あと、砂糖を摂らないようにしてる。添加物、加工食品とかも摂らないように。

鈴木 砂糖は摂っていいと思うんだけどなあ。

和嶋 俺もやることが極端なんだよね(笑)。

鈴木 ライブのときには弁当があるんですよ。イベンターが入ってるから。それなのに、自分で弁当作って持ってきて、それ食ってるからね。

ノブ 渋公のときも!

和嶋 ケータリングに手を付けない。

鈴木 玄米かなんかに梅干しが乗っただけの。

一同 (笑)

ノブ あと、野菜を持ってきて。

鈴木 ガリガリ、ガリガリ……。

ノブ 人参とか楽屋で食べてるの。

和嶋 他人から見たら、ものすごい貧しい食事を摂ってるんです。

鈴木 和嶋くんのなかでは、いちばん豊かな食事ってことになってるらしいですよ。

和嶋 玄米たっぷり食うと、腹持ちいいし、いいですよ。あと、バナナとか2, 3本食って。

――パフォーマンスは以前と比べて向上しましたか?

和嶋 とりあえず、大丈夫ですよ!体は軽快に動くし。

ノブ ちゃんと、レコーディングとかライブツアー前とかは禁酒をするんです。

和嶋 そうですね。アルコールを摂らない。というのも、僕はバンドの動員があまりなかった時代にお酒に溺れまして(笑)。半分アル中みたいになって、手が震えたときがあったんです。これじゃ楽器弾けないと思った。このところのツアーはお酒飲まないようにしてます。体も軽くなってジャンプできるんで……。ただ、渋公終わったあとにすごい昔の友達からメールがきて、「すげー痩せたよ!」って言われちゃったんで、もう少し腹いっぱい食おうかなと思ってる今日この頃です(笑)。あと、動物性のものも摂ろうかなと。

鈴木 あまり痩せすぎると、どうも早死にするらしいよ。

和嶋 そうなのよね。俺もちょっとこれやりすぎたかなと思ってる。

鈴木 心臓に負担がかかるらしいよ。ちょっとデブのほうが長生きするんじゃないかなー。

和嶋 まあ、ラクダのように体に貯めてるわけだからね。今たぶん俺、ガソリンがエンプティに近い状態で毎日動いてるわけだから。

一同 (笑)

和嶋 体は軽いけど、たしかに危険かな。ベジタリアンで今のところ問題ないんですけど、今後はまた食生活を見直します。

ノブ バランスいいほうがいいって言うもんね。肉も魚もちょっとずつ摂ったほうがいいって。

和嶋 うん。そのようですね。僕はわりと柔軟に変えて、健康に気を遣っていきたいと思います。

ノブ でも、健康のことは考えるようになりましたねー。

和嶋 みんな考えてるね。

ノブ 俺、ライブ前でもなんでも、いくら飲んでも平気だと思ってたんです。ライブ直前は絶対に飲まないですけど。飲んでステージに上がるってことは絶対にしない。2 DAYSのときも、ライブが終わって朝まで打ち上げやって、翌日のライブでも平気だったんです。でも、飲まないほうが、全然いいプレイができる。

和嶋 そりゃそうですよ。絶対そうです!

ノブ もうすぐ、高校生以来、30年ぶりの健康診断を受けに行きます。

和嶋 まさに今、健康を気にしている状態ですね(笑)。

ノブ がん検診も受けるし。健康にはやっぱり気を遣わなきゃいけないなーって、まさに思ってたところです。研ちゃんは普段の健康法、ある?

鈴木 精神的な健康法。自分がいやなものは無理してやらない。俺、打ち上げが死ぬほど嫌いなんですよ(笑)。無理して参加せず、「俺行かない」って言うようにしてます。

ノブ いつも素直に、いやなものはいや。

和嶋 鈴木くんはストレスを溜めないようにしてるね。結局、それはなぜかというと、バンドを長く続けたいっていう気持ちがみんなにあるからです。

ノブ ちゃんと人前でいいプレイがしたいっていうね。

和嶋 そこに尽きますね。

――よいものを届けたい。そのためには体も心も健康で。

和嶋 僕らはある意味でアスリートなんだよ。しかも、スポーツ選手より長くやれる。ロックミュージシャン、すごくいい仕事ですよ。

ノブ 特に引退があるわけじゃないしね。バイクもスピード出さなくなりましたよ。ぶっちゃけ、僕ら3人のうち、誰かが怪我したら、治るまでは動けなくなってしまう。

和嶋 いわば、替えがいないわけですから。野球と違って、ファームがあるわけじゃない。全員1軍なわけですよ!常にベストの状態でやれるように、今後ともやっていきたいです。

ノブ 誰かが倒れたら、もう終わりだし。それを思ったら、なんとなく自覚も生まれて。「俺がもし怪我なんかしたら、ダメだよなあ」と。

――ライブや作品で、素敵な光景を届けたい。そんな3人のあうんの呼吸でまとまっている、と。

和嶋 歳は重ねるもんだなーと思いますね。そういうことがわかるようになったんです。いいものをやるためには、自分もいい状態にしておかないとダメだっていうのがわかりました。

ノブ これがいちばんいい質問だったかもしれないですね(笑)。




 

■ライブ情報
『屋根裏の散歩者~「現世は夢」ライブDVD発売記念ツアー~』(全7公演/全てワンマン)
7/16(木) 博多 DRUM Be-1
7/18(土) 香川 高松 Olive Hall
7/20(月祝)心斎橋 BIGCAT
7/22(水) 名古屋 Electric Lady Land
7/24(金) 渋谷 TSUTAYA O-EAST
7/30(木) 札幌 Bessie Hall
8/1 (土) 青森 Quarter

*チケット絶賛発売中!
http://ningen-isu.com/schedule_live/